【リーンスタートアップ】妄想理想アーリーアダプターを作り上げる罠

アーリーアダプター(early adopter)」という言葉があります。

アーリーアダプターの意味は、以下です。

流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%。

[出典:マーケティング用語集]

イノベーター(革新者)に次いで早く物事を受容する層であり、アーリーアダプターの全体に対する割合は13.5%程度であると言われている。

アーリーアダプターは、新しいものを自らで判断して採用する先進性を持ちながら、しかも一般的な価値評価とずれが少ない価値観を持っているとされる。

アーリーアダプターに受け入れられるか否かによって、商品やサービスが普及するかしないかが決定するとされている。

[出典:IT用語辞典バイナリ]

 

また、近頃流行りの米シリコンバレー発の起業の新しい手法「リーンスタートアップ」というものがあります。

そのリーンスタートアップでは、「顧客にインタビューをする」という過程があります。

インタビューする顧客は、「アーリーアダプター」であることが求められ、そのため、リーンスタートアップを実践する人は、アーリーアダプターを探します。

 

ここで、最近リーンスタートアップを実践している人からよく聞く言葉があります。

「今日会った人は、アーリーアダプターではなかった」

 

私は、その言葉を聞く度に「ん?」と疑問に思ってしまいます。

それって、単に自分が妄想している理想の人でなかっただけで、実はアーリーアダプターだったんじゃないかって。

自分のアイデアが素晴らしいと正当化するために、現実を無理矢理捻じ曲げて、アーリーアダプター像を変えてしまっていることがあるのではと推測します。

自分のアイデアを否定されると困るので、自分の仮説を支持する相手を見つけようとします。論文を書くために、評価実験で、限定的な理想の実験環境を作り出し、そこで評価して、有効であった!と述べることがよく論文の世界ではあります。もちろん、そのため、ちょっとでも異なった環境だと再現性が全くないということが多々あります。

まさに、そんなようなことが、リーンスタートアップの顧客インタビューフェーズで起こっているときがあるのではと思います。

 

初めに述べたアーリーアダプターの定義には、「情報収集を自ら行い、“判断する人”」、「一般的な価値評価とずれが少ない価値観を持っている」、「アーリーアダプターに受け入れられるか否かによって」とあって、アーリーアダプターは、何でも受け入れるわけではなく、価値あるモノを判断するといえます。

よって、「自分のアイデアや仮説を否定する人は、アーリーアダプターではない」と考えるのは、間違いです。しかし、そう考えてしまっている人が多くいる気がします。

さらに、アーリーアダプターは、市場全体の13.5%ぐらいと言われているのに、市場の対象になり得る人数十人にインタビューして、アーリーアダプターがいないというのも確率的に不思議だと思ってしまいます。

「アーリーアダプター」ではなく、「イノベーター」を探してしまっているのではと考えます。

 

以前、ある新商品に対して、欲しいか欲しくないかと問われ、「○○の機能がないから利用価値が低く、その値段では欲しくないが(庶民が買うには、非常に値段が高い)、○○の機能が追加されさえすればすぐに買う」と返答したら、「君は、アーリーアダプターではない」と言われ、「えっ?」と腑に落ちない経験をしたことがあります。少なくともその商品に対しては、自分はアーリーアダプターと思っていましたので。

「価値があるかどうか」、「ある課題を解決できるかどうか」ではなく、「買うかどうか」、「価値がなくても使うかどうか」でアーリーアダプターかどうかを決めている人がいます。

もし、対象のガジェットの値段が10億円するとなったら、その時点でアーリーアダプターは0人となってしまいます(タイムトラベルできるガジェットなら買う人がいるでしょうが)。

それを考えると、アーリーアダプターであるかどうかの判断がおかしいのではと思えてきます。

 

リーンスタートアップという手段が目的化し、それをクリアできないとアイデアがボツになってしまうので、実体からかけ離れ理想を現実に落とし込もうとがんばるのです。ここまで来るともはや宗教みたいなものです。

本当は、見切りをつけてピボットすることが推奨され、それこそがリーンスタートアップの在り方なのですが(小さな失敗を短期間で積み重ね、成功へと導く)、人によっては、「おれの辞書に“失敗”という言葉はない!」という理論で、終わらせるわけにはいけないと、ずるずると長期戦にしてしまうのです。

本末転倒です。

 

ただ、中には、本当にアーリーアダプターに巡り合えないということも多々あると思うので、見極め力・目利き力が重要になってきます。ただ、その能力があったら、そもそもリーンスタートアップを利用する必要性もあまりない気がしますがw

主観や自分の感情だけで物事を考えるのではなく、いかに客観的に物事を捉えることができるか、また、手段を目的化しないように気をつけることが大切です。

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