「文化の違いを多角的に捉える UX & Service Sketch #27」というイベントに参加してきました。
日時:2017年4月27日(木) 19:30 –
会場:CrowdWorks Mix Lab.(東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー6F)
今回のテーマは「文化の違い」です。
サービス開発において、文化の違いがどのように影響してくるかを講演者の実体験を基にプレゼンするという会でした。
講演者は、4人です。
UXという言葉は嫌いですが(UXという言葉が闇雲に乱用され、過度な曖昧性を持ってしまい、論理的な議論ができなくなってしまっているので)、過去に認知科学関係の研究もしていたり、個人でアプリ開発もしていたりするので、UXに興味があり、参加しました。
ただ、講演タイトルなどを見ていると自分が聞きたいUX関係の話とは違うかなと思いましたが、クラウドワークスさんの会場見学なども含め、行ってみました。
一般参加枠が予約で埋まっていたので、ブログ執筆枠で参加しました。
それもあり、今回イベント参加レポートを書いています。
宣伝がてら書くと、私が趣味で開発したスマホアプリに、Lonelycolor(iPhone版、Android版)などがあります。
このような趣味のスマホアプリ開発や仕事でのシステム開発などに聴講内容を役立てられたらと考えたのも参加した理由です。
発表全体を聞いた感想は、UXというより、マネジメントに近い内容で、一言でまとめると「ダイバーシティは素敵ング!」という内容でした。
ダイバーシティとは、個人や集団間に存在するさまざまな違い、つまり多様性、または、それを活かす考え方のことです。その多様性を上手いこと取り入れると、色々良いことがあるよ!というものです。
多様性の話を突き止めようとすると哲学の深い話になりますし、普段思っているダイバーシティについての色々な考えがあるのですが、それを書くとすっごく長くなるので、今回は省略します。
ただ、私の考えを少し書くならば、仕事のチームとしてのダイバーシティについては、そのチーム内の一緒に働くメンバーが、相手を尊重できる能力があるか、柔軟な思考の持ち主か、つまり、聖人であるかというのが前提にあり、皆が聖人であればダイバーシティを上手く取り入れることができるが、聖人である素質の欠けている数が多い人がいるとそもそもダイバーシティを取り入れられる状況にないと考えています。
ベンチャー企業の場合は、まだ上下関係がフラットな所が多い傾向があると推測しますが、日本の古い年功序列の体質がある企業の場合は、上に対してイエスマンでないと抹殺されます。最近、そんな古い体質の企業もダイバーシティと連呼していますが、口ではダイバーシティというものも、異文化、異思考排除の考えの持ち主の年配社員が多いです。
そのような環境に身を置かなければならない場合は、異文化を取り入れようとしてもその労力コストが大き過ぎて、しかも、コストを掛けても無駄になる確率が非常に高いため、総合判断すると結果的にダイバーシティをチームに取り入れない方が効率的、生産的になってしまう場合があります。ただ、そのようなチームは時代に取り残される確率も高いです。
時代に取り残されても良いと思うのなら、ずっとのその環境に身をおけば良いし、それが嫌なら、さっさと聖人が権限を持つような環境に移るのが効率的です。
と書いていると終わらなくなるので、そろそろ聴講内容を書きます。
ちなみに、大雑把なイベント参加者の内訳は、デザイナー6割、エンジニア4割、その他プロダクトマネージャーなどでした。
国内と海外の文化の違い「海外の文化を乗り越えろ〜海外展開3つの失敗あるある〜」
講演者:ケニー朝倉(アドウェイズ:事業推進担当エヴァンジェリスト)
ケニーさんは、小さい頃に、オーストラリアで20年以上育っており、また、2011年のモバイルバブル時代に仕事でサンフランシスコに行っていた経験があるそうです。
モバイルバブルで成り上がった知り合いの奢りで、ラスベガスに連れて行ってもらったりしたそうです。
そういう人らがいる一方、サンフランシスコには、ホームレスもたくさんいるそうです。才能があれば成り上がれるけど、才能がなければ人間とし扱ってもらえないという状況らしいです。
まさに、米国ならではの成果主義ですね。
ケニーさんは、失敗あるあるを3つ紹介してくれました。
【失敗あるある1:現地に行かない】
現地に行かなくてもインターネットで現地の情報を仕入れることができるという人がいますが、それでもやっぱり現地に行って向こうの人と直接話すことによってわかることもあるという内容です。
先ほど書いた話ですと、ホームレスの状況や成り上がった人の雰囲気は、現地に行かないとわかりそうにないですよね。
私の経験としては、実際に、エジプトのピラミッドの中に入ったときに、想像していた温度や湿度、音、見たときの感覚が違っていて、感動したことがあります。もし、ピラミッド関係のサービスを開発することになれば、UXとして、このような体感情報も必要になってくるかもしれません。
ただ、今後、HMDが超発展して、五感も再現できるようになって、仮想的に現地に行けるようになれば、物理的に行く必要がなくなるかもしれません。
【失敗あるある2:リソース不足・準備不足】
何のリソース不足、準備不足なのか聞き逃してしまいました。
述べていたことは、
米国は他民族なので、広告モデルに様々な人種を使うのが当たり前で、そうしないと上手くマーケティンができない。
米国のゲームアプリの広告画像は、ゲーム画面のスクリーンショットを加工せずそのまま使う傾向があるが、日本はごちゃごちゃしたデザインにする傾向があり、国民性の違いがある。
サービスを現地にローカライズするときは、中途半端にせずに、ローカライズするならする、ローカライズしないならしないときっちり方向性を決めるのが重要。
という内容であり、失敗あるある1の内容と一部被っていました。
【失敗あるある3:ローカライズを意識してサービスの根本を見失う】
予約トップ10というスマホゲームアプリの予約サイトを海外展開しようとしたときに、日本のチームは、予約トップ10をアプリストアにするビジネスモデルを考えていたけど、海外チームは、ゲーマーのコミュニティにするビジネスモデルを考えていたそうです。
ビジネスモデルの考え方が異なっていたりすると、そもそも何のためにローカライズするんだろうとわけわからない方向に行ってしまうことがあるので、しっかり海外展開の理由などを一から再度考えて決めて、方向性を見失わないようにするのが重要と述べていました。
海外展開に限らず、会社の国内での事業の方向性ですらあちこち行っている会社が多いと思うので、なぜ、何のためにやるかなどは、日頃から常に意識しておくのが重要だと私は思っています。
人や環境が生む文化の違い「デザイナーが創る文化」
講演者:田屋和美(Tigerspike:UXデザイナー)
田屋さんが勤めている「Tigerspike(タイガースパイク)」は、オーストラリアのシドニーに本社を置いているデジタルデザインをしている会社です。2017年4月現在、世界8ヵ国に展開していて、社員数は合計300人弱で、東京では、12人の社員が働いているそうです。
デザイン思考のプロセスで業務をしています。
それを「Discovery ⇒ Ideate ⇒ Define ⇒ Build」という4つのフェーズを載せた資料で説明していました。ただ、案件によってやり方は、柔軟に変えるそうです。
田屋さんは、絵に描いた餅が嫌いであり、Tigerspikeもコンサルだけで終わらず、動くものに落とすので、そこがTigerspikeの強みだそうです。
案件例として、「GINZA SIX(ギンザ シックス)」のBeaconを使用したマップ案内サービスの紹介をしていました。
Tigerspikeが6社を統括して、サービス開発を進めたそうです。
Tigerspikeは、システムの調査・選定、プランニング、インストール、電波強度マップ作成、組み込みまで行ったそうです。
これを聞いて、私も仕事で、電波強度マップ作りの手伝いをさせられたことを思い出しました。笑
Tigerspikeでは、テクニカルエンジニア主体のテクニカルワークショップをやっているそうです。
Tigerspikeの紹介の後は、組織とは、組織文化とは、何ぞやという話に入り、氷山モデルの「UX Iceberg」のような、米国の心理学者「エドガー・H・シャイン」が定義したモデルを紹介していました。
このモデルは、「人工物や想像されたもの(見えるもの)」、「価値(見えないものだが、意識されている)」、「基本的な仮定(見えないもので、意識もされていない)」の3つから成り立っています。
組織文化を考える上で一番重要なのが「基本的な仮定」だそうです。
基本的な仮定は、組織が意識せずに行動しているものであり、例として「理解がない人は、UXデザイナーは、UIもなんでも作るのが当たり前だと思ってしまっている」と述べていました。
プログラミングが一切できない上の人から、何でも短期間で作れるんだろと無茶振りされるエンジニアにとってもあるあるです。
このような人は、問題意識を持てていないので、考えを変えていくのが難しいそうです。
私が上記で述べた、聖人の話と同じだなと思いました。
意識すべきポイントとして、「共創と共感と理解」=「価値作り」、全員で作ろう、デザインはデザイナーだけで作ることではないと述べていました。
皆で作れないのなら案件を受け入れないと述べていました。
これは私の「権限を聖人が持っている環境に移る」という考えと同じであります。
ただ、「受け入れない」という時点で、異文化を受け入れていないようにも見えるので、パラドックスのようになってしまっています。
つまり、ダイバーシティマネジメントを上手いこと回すためには、前提となる条件が存在するとも言えます。
また、「振り返りと成長」も重要と述べていました。
振り返り方法として、「PIR(Post Implementation Review)」、「CSAT(Customer satisfaction)」、「KPT(Keep Problem Try)」を紹介していました。
プロジェクト全体をクライアントと評価しているそうです。
組織の中にデザインプロセスを組み込もうと述べていました。
業界による文化の違い「ファッションとテクノロジーは融合できるのか」
講演者:八幡純和(Psychic VR Lab:Creative Director / Senior Engineer)
八幡さんは、アプリストアの配信の仕組み開発などのサーバエンジニアをしていた経歴を持っています。
「Psychic VR Lab」は、創立3年目で、社員数は約10人です。
今は、「STYLY」というサービスに携わっているそうです。
STYLYは、HMDを利用したVRのファッション専門のバーチャルショップで、服の周囲をぐるっと回ったりして服のチェックをすることができます。
PARCOなどと共同でいくつかイベント出展をしています。
ファッション業界は、テクノロジーの理解が少なく、国内の場合、ZOZOTOWNの一人勝ちになっていると八幡さん自身は思っていると述べていました。
私は、以前、ファッション業界の人と話す機会があり、すごく面白いファッション業界の超アナログ世界の話を聞いて、非常に驚いたことがあります。異文化断絶の宗教の世界でした。
Psychic VR Labは、ベンチャーということもあり、エンジニアの開発能力も必要であれば、資金調達する能力も必要であり、1人1人の専門的な能力が重要になってくるので、異文化(異なるバックグラウンド)を取り入れるのはなくてはならない状況だそうです。
VRでは、何でも仮想的に空間を作り出すことができるので、STYLYを通して、ブランドイメージ、デザイナー・アーティストの世界観、エディターの思い描くストーリーを他者に伝えられるようになればと述べていました。
空間を身にまとう(自分の好きな格好や環境をその時々で身にまとえる)、着る空間を新たなファッション文化とすることを目指しているそうです。
と書いていたら、アニメのマクロスFのシェリルのコンサート風景を思い出しました。コンサート中に服やステージが切り替わる風景です。よくSF系のアニメなどに出てくる、服や周囲の環境がCGで切り替わるシーンです。最終的に目指すゴールは、そのようなものなのでしょうかね。
また、Psychic VR Labは、月1で社内ハッカソンをやっています。そこでマイクロソフトのHoloLens(ホロレンズ)を利用したMRアプリを開発して公開したら、それについて、マイクロソフトのTwitterアカウントにつぶやかれたと言っていました。
チーム内における文化の違い「デザイナーとデザイナーじゃない人でデザイン組織を作る」
講演者:廣瀬健(クラウドワークス:UXデザイナー / エンジニア)
最後の講演は、今回のイベント会場のクラウドワークスの方でした。
昨年は、デザイナーがいないような状況でサービス開発をしていたらしく、そこから、「UXデザイングループ」というグループが社内にできるまでの話をしていました。
UXデザイングループは、デザイン、定性調査(インタビュー)、デザイン手法・文化の導入などをやっている組織です。デザイナーが集まっている組織ではなく、デザインする組織だそうです。
今は6人のグループで、内訳は、デザイナー3人、コピーライター(マネージャー)1人、エンジニア1人、インタビュー担当1人(新人で、デザインはやっていなかった)だそうです。
異なるバックグラウンドの人が集まると、前提知識やアプローチ、価値観が違うので、コミュニケーションコストが高いと述べていました。ただ、異文化を取り入れるメリットを生かさないともったいないので、お互い相手のことを尊重して、異文化を上手く取り入れられるようにしているそうです。
相手のことを尊重しようという気持ちがあるのが素晴らしいと私は思いました。おそらく、古い年功序列体質でないからできる部分もあるかと思います。
私は今までの経験で、とにかく相手を貶したり、平気でエンジニアを使い捨ての駒呼ばわりする年配の方々を何人も見ているので、相手を尊重するという当たり前のことができることさえも感動してしまうほど毒されてしまっています。
異文化の取入れをスムーズにする方法として実践していることを述べていました。
1. お互いを知る
気になった記事のシェア、チームの本棚を作る(自分が普段読んでいる本を持ち寄る)、雑談・飲み会
2. 共に学ぶ
イベント・勉強会、読書会、ユーザーインタビュー
3. 同じ方向を見る
スクラム風チーム運営、掲示物(ノーミーティングノーザンギョーポスターなどを貼る)
良い方法だなぁと思ったのと同時に、過去の経験上、気になった記事のシェアをしただけでブチ切れ、イベント参加報告をメーリングリストに流しただけでブチ切れ、他人の趣味はダメ出しし排除して、とにかく自分の趣味だけを相手に推し進めて来るような人が日本の会社にはいるので、そういう人がいるとそもそも上記のようなことを実践しようとするとブチ切れ、逆効果になるというどうしようもないケースもあるなと思いました。
「結論に納得できなくても、結論を出すことに納得することが大事」とも述べており、民主主義と同じだなと思いました。
ダイバーシティの話をすると最終的には、哲学や人の行動心理などの話を考えてしまいます。
なぜ宗教は他宗教を排除するのか、なぜ人は戦争を起こすのか、というような話とも繋がってきます。
講演内容自体の感想は以上ですが、発表スライドの文字がほとんどスライドの下に書かれていて、後ろの席からは、前の人の頭が邪魔で全然見えなく、UXが悪い発表でした(ここで述べるUXは、計算機以外の事例も含むと一時的に定義します)。
講演スライドにおいて、「スライドの下の方に文字を書くのは、なるべく避ける」というのは、一般的に知られているプラクティスなので、知っておくと良いです。
以前もあるUXイベントに行ったのですが、UXを本職にしている人が開いたイベントなのに、UXが悪いイベントでした。
「心理学の研究をしていて、相手の心理を読めるはずなのに、人とのコミュニケーションが下手な心理学者はどうなのか」というような話がありますが、定義があやふやで何でもかんでも含めてしまわれているUXという言葉を安易に使うと、このようなツッコミが入るので、注意が必要です。
パネルディスカッション(ラップアップセッション)
最後に、今回の全講演者4人が前に登壇して、軽くパネルディスカッションをしました。
トピックは2つあり、1つ目は、「文化の違いの良い点と悪い点」というトピックで、分かち合えるなら、良い点しかないと述べていました。
2つ目のトピックは、「文化の違いがそこにあったらどうするか(どう対応するか)」というもので、「文化の違いを認識するのが重要」、「お互いの得意なことや不得意なことをチームの中で共有する」、「違いをどのようにしたら受け入れられるようになるのかを考える」、「いったん引いたり、待ったりして観察し、文化が混ざり合った時にどうなるのかを考える」と意見が出ていました。
私も2つ目のトピックについて、このブログを書きながら数十秒考えてみましたが、宗教間の思想の違いが引き起こす問題の解決方法を考え出して、なかなか答えが出そうにないので考えるのをやめました。
懇親会
懇親会があったので、参加者数人と話をしましたが、まさかの話した相手が私が今勤めている会社の元社員で、しかも、入社年が同じの同期でした(今回初めて知り合いました)。
さらには、その方が仕事で株アプリ開発をしてると言ったので、「株アプリ開発しているんですか!私も株をやっているので興味があります!!」と述べたら、そこで一緒に話をしていた別の人も株売買をやっていて、株の話で盛り上がりましたw
ただ、ちゃんと株アプリのUXの話もしました。
今の株売買アプリで欲しい機能などを聞かれたので、「5億円儲けられる機能が欲しい」と述べておきました。
5億円儲けられるアプリなんて、これ以上にない最高のUser experienceです。
まんまん満足!顧客満足!!です。
ブログ執筆枠参加でせっかくなので、今回の会場提供社の宣伝もしておきます。
クラウドワークスは、2017年4月現在、エンジニアなどの募集をしています。興味がある方は、Wantedlyからと述べていました。
社員と寿司ランチ交流できるそうです。
また、会場をイベント用に貸し出しています。100名ぐらい入れるそうです。
コメント