巨大市場の中国でP-CAB「tegoprazan(テゴプラザン)」が発売 ‐ ラクオリア創薬

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ラクオリア創薬のP-CABの胃食道逆流症治療薬の「tegoprazan(テゴプラザン)」が2022年にサブライセンス先のLuoxin Pharmaceutical Group(以下、Luoxin)を通して中国で発売(上市)されました。

胃食道逆流症治療薬tegoprazanの中国における販売開始に関するお知らせ

 

tegoprazanは、HK inno.N(HKイノエン、旧CJヘルスケア)から「K-CAB」という名前で2019年に韓国で販売開始されて、2021年の韓国国内売上(院外処方実績)が1,096億ウォンに達する大型製品となっています。

2020年、2021年と韓国国内消化性潰瘍薬シェア第1位です。

韓国の市場規模からするととてつもなく売れている状態です。

それが、今度は韓国より遥かに大きい巨大市場の中国で販売開始です。

中国での商品名は「泰欣赞(タイシンザン)」です。

韓国のニュース記事では、泰欣赞の意味を「큰 즐거움을 돕는다」と書いており、Google翻訳で自動で訳すと「大きな楽しみを助ける」となりました。

 

中国の消化性潰瘍薬の市場規模は、2021年第3四半期の時点で、米国を上回る世界第1位の市場へと急成長しているとのことです(参考:胃食道逆流症治療薬tegoprazanの中国における製造販売承認に関するお知らせ)。

 

中国では、今の適応症は「びらん性胃食道逆流症」ですが、「十二指腸潰瘍」や「ヘリコバクター・ピロリ除菌療法」などにも適応症を拡大していき、さらに錠剤に加えて今後は注射剤まで製剤を拡大計画です。

 

以下は、tegoprazanの発売に関するLuoxinの公式発表と中国の記事です。

国家1类创新药替戈拉生首发仪式隆重举行 开启已定单品年销售10亿目标(Luoxinの公式サイト)

15天极速供应,山东省首个1类化学创新药加速上市惠及患者

tegoprazanの宣伝が大きく描かれたトラックや製品の箱、盛大な上市式典の写真が掲載されています。

中国の「山東省で最初の国家クラス1化学革新薬」とのことです。

ラクオリアの今回のお知らせには、「国家クラス1化学革新薬(中国語の記事を自動翻訳した)」のことが「中国または海外で登録されていない革新的な医薬品(分類1)」「分類1新薬」と記載されています。

分類1新薬の利点として以下のことが書かれています。

  • 一定期間ジェネリック(後発品)の参入を防御できる独占権が与えられる
  • 自国の企業による画期的な新薬であるという認識が広がることが市場シェアの獲得に好影響をもたらすと期待される

中国の記事に「山東省で最初」と書かれたり、トラックのデザインに含めるくらいなので、宣伝効果も抜群だろうと思います。

 

販売承認から販売開始まで、早くても数ヵ月は掛かると私は予想していたのですが、驚くことにLuoxinの高度な生産体制により、承認から生産供給までわずか15日で達成してしまいました。

これには驚きました。

上市の式典も風船のようなものをたくさん打ち上げて、数千人を超える従業員がオンラインも含み視聴する大体的なものとなっています。

日本のラクオリア創薬が創出した薬が中国でこんなに大体的に取り上げられるのは感慨深いです。

 

トラックのtegoprazanの宣伝のデザインを見ると「30分」と見えます。

tegoprazanが投与後30分以内に迅速に効果が現れるため、それを強調して宣伝しているようです。

胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎の患者は、早く症状を抑えたいと思っている人が多いと推測して、このような広告にしているのでしょうか。

 

また驚いたことに、Luoxinは「2年以内にtegoprazanの年間売上高を10億人民元以上にする目標」を掲げているとのことです。

Luoxinの公式サイトのお知らせのタイトルにも「10亿目标」と目標がはっきり明示されています。

さらに、「中長期的に年間売上30億人民元の大型製品に育成する計画」とのことです。

最終的に「中国で消化性潰瘍薬市場1位を目指している」とのことです。

 

2022年5月現在、「1人民元=約20円」なので、それで計算すると「10億元=200億円」「30億元=600億円」になります(ラクオリアの今回のお知らせでは「1人民元=約19.6円」計算でした)。

tegoprazanの中国の売上推移の予想は、今までも証券会社などが予想を出していましたが、なんといっても中国であり、保険適用の仕組みなどが色々ややこしそうだったり、何があるかわからないため、いまいち信頼性が不明確な予想でした。

それがここにきて、まさかのまさか、Luoxinが販売からたったの2年で10億元の目標、中長期的には30億元へ育成と発表。

私は、すごい順調にいって3年目で100億円も行けば良い方だろうなぁと予想していました。

それが2年で約200億円の目標。おったまげです。

 

先程紹介したラクオリアからのtegoprazanの中国承認のお知らせには以下のことが書かれています。

Luoxin社は、中国消火性潰瘍溶剤市場で3位を記録している消化器分野専門会社であり、3,000人以上の営業人材を要する大規模な営業ネットワークを構築している。

現地の特性に合わせたカスタマイズされた販売戦略の確立が可能で、K-CABの迅速な市場定着が期待される。

 

以前から、中国の記事などを見てもLuoxinのtegoprazanへの力の入れようが読み取れました。

それが今回の売上目標にも繋がっているのでしょう。

さらに、Luoxinの公式サイトのお知らせの文章を読むと詩人的な文章がいくつか書かれています。

薬の発売でこんな詩人的な文章を書くのは珍しいかと思います。

Luoxinがよほどtegoprazanに想い入れがあり、力を入れていることがうかがい知れます。

会社総力を挙げてtegoprazanで大きく会社を成長させるぞ!という攻める感じが伝わってきます。

 

中国でのピーク売上も証券会社などの予想では、バラツキがあって全くわかりませんでした。

しかし、現時点で年間売上30億元(約600億円)を目指していることが今回わかりました。

韓国の院外処方実績では、2021年に1000億ウォン以上、「1ウォン=0.1円」計算で既に100億円以上売り上げています。

つまり、少なくとも中国と韓国の2か国だけで「約600億円+100億円=約700億円」を最低限の目標と考えて良いということになるでしょう。

韓国の売上も適応症追加や口腔内崩壊錠の販売で、さらに増加すると予想できます。

 

また、以下の記事に、tegoprazanの市場と販売戦略に関する質疑応答が書かれています。

罗欣药业:中银国际、兴业证券等8家机构于4月28日调研我司

その記載には「tegoprazanは、逆流性食道炎で発売後5年以内に16億元に達すると予想し、十二指腸潰瘍(Du)、ヘリコバクター・ピロリ除菌(Hp)などの適応症も合わせると40億元以上に達する予想」というようなことが書かれています。

目標の30億元とは異なるので、30億元はあくまで会社として掲げた現時点の営業の目標で、40億元(約800億円)は予想ということでしょうか?

もしも中国だけで40億元以上売れたら、韓国と中国の2か国の売上だけで、1000億円に達する可能性もあり得ます。

 

以下の画像は、2022年2月14にリリースされたラクオリアの「事業計画および成長可能性に関する事項(2022 年 12 月期~ 2024 年 12 月期)」のものです。

ラクオリア創薬 中期経営計画2022-2024 テゴプラザン各国の開発状況と潜在市場

ラクオリア創薬 中期経営計画2022-2024 テゴプラザンの収益試算

 

「2028年までヨーロッパを含む100か国に輸出することが目標」とのことなので、中国と韓国だけで、tegoprazanが最低でも約700億円の売り上げを目指すなら、他の大きい市場の北米や日本を含み、100か国で販売できたら、年間売上2000億円を目指せるブロックバスターになる可能性があるといっても不思議ではありません。

そうなると、上記の画像の試算のように、ロイヤルティ5%計算で年間「2000億円×5%=100億円」の収益をラクオリアが将来得られる可能性があります。

もしもそうなった場合は、他の日本のベンチャー企業で年間それだけ売り上げる上市薬を創出したバイオ企業は現在何社あるのでしょうか?

そのような薬を生み出せるベンチャー企業は誇れる企業でしょう。

 

Twitterで、「まともに上市した薬を創出したことがある日本バイオベンチャー企業なんて存在するの?」というツイートを時々見かけますが、ラクオリア創薬の存在が忘れられています。

知名度が低いのでしょう。

もしも中国でtegoprazanが大きく売れたら、皆が読むような有名雑誌やネットメディアに「年間売上~億円のブロックバスター薬を生み出した日本が誇るバイオベンチャー企業 “ラクオリア創薬”」というようなタイトルで、記事を書いて欲しいです。

そのような宣伝をしないと、tegoprazanが何千億円売れるブロックバスターになっても、実際にブロックバスターを生み出した技術力があるバイオベンチャー企業は日本には存在しないと世間一般では思われたままでしょう。

日本の創薬・バイオ企業を成長させると日本政府や世間で言われることがありますが、こういう宣伝をしていかないと影が薄いままで、成長活力は湧かないでしょう。

そのため、日本の創薬企業を伸ばすためにも、こういう宣伝を積極的にしていって欲しいです。

 

競合薬の武田薬品工業のP-CABの「タケキャブ(vonoprazan、ボノプラザン)」は、既に中国で販売中です。

そのため、タケキャブとtegoprazanの今後の中国での売上の差や患者が使ってみた感想がどのようなものになるのか気になります。

もしもtegoprazanの方が中国で人気になった場合は、米国や欧州、日本、その他の地域でのtegoprazanの今後の展開も良くなる可能性があります。

 

 

それにしても、ラクオリア創薬の株主である私は、tegoprazanが韓国で販売され、中国で販売開始されるまでラクオリア創薬の株を保有し続けるとは思っておりませんでした。

世界初NERD適応のP-CAB「tegoprazan」が韓国で発売 ‐ ラクオリア創薬

 

この調子だと、米国販売もいつの間にか来てしまいそうです。

そしたら、今度は日本の販売と…

できれば、昔からある未導出の消化器系パイプラインの

  • 5-HT4部分作動薬(RQ-00000010)
  • 5-HT2B拮抗薬(RQ-00310941)
  • モチリン受容体作動薬(RQ-00201894)

を「ばんばんばんと連続して好条件で契約発表」してからの「中国のtegoprazanの売上好調」からの「その他パイプラインのステージアップ」からの「大学共同研究ネタや次のイオンチャネル薬の大型導出」からの「新モダリティでうんたらかんたら」で株価が大きく上がった状態で、tegoprazanの米国販売を迎えて欲しいです。

でも、最近は米国も日本もグロース市場から資金が抜けていっている状態のため、よほど大きなお金に繋がるネタが続かないと厳しい環境です。

そのため、tegoprazanの中国の売上には期待したいです。

 

tegoprazanが世界中の患者のQOLを向上させていくことを願います。

コメント

  1. より:

    今回も興味深い記事をありがとうございました。
    テゴプラザンの拡大が現実味を帯びてきて嬉しい限りです。
    テゴプラザンは各国の薬会社から販売することで現地の薬として認知を受けられる一方、技術を渡してしまうのでいつかロイが入らなくなってしまうことはないか少々懸念しておりますがそこはどうお考えですか?

    • >> ぷさん
      表現として正しいかわからないので、あくまで私の推測と思っていただければと思いますが、技術を渡すというか、開発、製造、販売の許可の権利を与えるというようなものだろうと思います。
      ラクオリアから公開されている有価証券報告書に契約内容の一部が記載されていますが、例えば、ある契約では「契約締結日からCJ HealthCare Corporation(韓国)による当社へのロイヤルティ支払い義務が終了するまで」というようなことが書かれています。
      つまり、この「支払い義務」がいつかまでなのかが問題だと思います。
      しかし、それがいつまでなのか公開されているかは不明です。
      ただし、創薬・製薬企業のニュース等でよく聞く話では、「特許期限」が話題になるため、基本的にはラクオリアが保有するtegoprazanに関する主要な特許の期限を考えておけば良いのでは?と思っています。
      少なくともその特許期限が切れるまではロイヤルティの発生が生じるのではと予想しています(契約内容次第なので、実際はわかりません)。

      ラクオリアが経営陣の交代の株主提案が行われた理由の1つには、tegoprazanの特許が切れた時の収入源として次に稼げる製品が上市されるように研究・開発体制を強化するというものがありました。
      そのため、ぷさんが仰る通り「いつかロイが入らなくなってしまう」という懸念は、正しい懸念です。
      その懸念が理由の1つとして、株主提案で経営陣が交代され、新経営陣が懸念解消へと努力している最中です。

      今の所、複数のイオンチャネル薬が順調に開発が進んでいるため、すごい競合薬が出てこない前提で、それが上市されたら、tegoprazanの特許が切れても問題ないだろうと私は予想しています。
      しかし、イオンチャネル薬の開発も簡単なものではないため、上市に辿り着けるかは不安が残ります(このリスクはどこの創薬・製薬企業も同じ)。
      ただ、それらが上市に辿り着けなかったとしても大丈夫な体制にしてくれるだろうと私は新経営陣に期待しています。
      また、tegoprazanがもしも年間数千億円売り上げるレベルになったら、ラクオリアへのロイ収入も増えるため、他社から有望と判断した化合物の導入もしやすくなります。

      tegoprazanの特許切れまではしばらくあるため、投資家という立場としては現時点では、ぷさんが抱く懸念をそこまで抱いてはおりません。
      もしも、tegoprazanの特許切れが近くなってきたときに、上市が近い開発段階の大きく売れそうな薬がなかった場合や何か代替策がなければ、ラクオリアへ投資するかどうかは再検討が必要と考えています。

      ちなみに、tegoprazanの特許期限が気になる場合は、私が間違った情報を書いたらダメなので、ご自身でお調べください!

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